謄写版イラスト

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人の手による繊細な描写に、かすれが生む味わい深い表情、そして、刷るたびに異なるオリジナルの色合い。

ほとりプレスの表紙イラストは「謄写(とうしゃ)版(別名:ガリ版)」という印刷技法により制作されています。謄写版は日本で発達した昔ながらの簡易印刷で、現代ではコピー機やパソコンの普及に押され、その技術が失われつつあるとか。

皆さんにも、手仕事ならではの謄写版の魅力をぜひ知っていただきたい、との思いから、創刊号の制作の裏側を大公開! 表紙を担当したグラフィックデザイナー&イラストレーター水野早穂子さんに、謄写版の制作風景を見せてもらいました。

 

【道具】

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中央から時計回りに、刷り台&スクリーン、イラスト原画&原紙、鉄やすり&鉄筆&掃除ブラシ、版画用絵具、固定用マスキングテープ、インクローラー&ヘラ&トレイ。これが謄写版に必要な道具一式です。

入手しづらい道具もあり、中でも、鉄やすりは掃除ブラシでメンテナンスしながら大切に使っているそう。

さあ、道具を揃えたら、制作スタート!

 

【1】原紙の上から、鉄筆で線をなぞる

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今回制作するのは、創刊号の表紙の左下に描かれた野草「ヤブジラミ」。イラスト原画の上に原紙を乗せて、鉄筆で輪郭をなぞります。

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原紙にはロウが引いてあり、鉄筆でなぞった部分が線になって浮かび上がります。

 

【2】鉄やすりの上で製版する

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原紙を鉄やすりに乗せて固定し、2種類の鉄筆を使い分け、輪郭や塗りつぶしたい面に筆圧をかけ、描画・製版していきます。ちなみに、この時の“ガリガリ”という音から、別名「ガリ版」と呼ばれるようになったとか。

描写した部分に小さな穴があき、そこにインクが通って絵柄が印刷される仕組みです。

 

【3】刷り台にセットし、インクを調合

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版が完成したら刷り台にセットし、次にインクを用意します。版(原紙)は基本的に使い捨てで、インクもその都度調合が必要。だから、もとのイラスト原画は同じでも、版によって微妙に描写が異なったり、その日のインクの粘度によって、仕上がりの表情が変わったりします。二つとして同じ作品は存在しない、まさに一期一会!

 

【4】インク通し、刷り

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ローラーにインクを乗せ、版に一度インクを通した後、いよいよ刷り本番! ローラーを版に押し当てながら転がして、セットしておいた紙にイラストを印刷します。

 

【5】刷り上がり、乾燥

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刷り上がったら、版に貼りついた紙をそっとはがします。ドキドキの瞬間……


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じゃーん! きれいに刷り上がりました。かすれ具合に、何とも言えない味わいがありますね。これを乾燥させれば完成です。

創刊号の表紙では8色でモチーフが描かれているため、この工程を繰り返すこと計8回! 刷ったものをデータ化し、パソコンのデザインソフトでレイアウトしています。

水野さんは、無作為なかすれや、毎回異なる刷り上がりに面白さを感じ、この謄写版に取り組み始めたそう。

暮らしの中でイラストやアートを身近に楽しんでほしいと、今後は、謄写版を使ったグッズ展開も検討中とのこと。水野さんのウェブサイトでは、他にも謄写版作品が公開されていますので、ぜひのぞいてみてください。

【グラフィックデザイナー&イラストレーター 水野早穂子さん】

https://mizunosaho.jimdofree.com/

 

写真:こんどうみか 文:中西沙織